パート・アルバイトでも労災保険は使えます|「労災はない」と言われても雇用形態は関係ありません

仕事中に転んで手首を骨折してしまった。休んでいる間は時給の収入が止まるのに、店長から「パートさんは労災とかないから」と言われて、おかしいと思いながらも言い返せなかった——そんな方に向けた記事です。

先に結論をお伝えすると、「パートだから労災はない」と言われても、雇用形態は関係ありません。会社の指示のもとで働き、賃金を受け取っている労働者であれば、パート・アルバイトでも正社員と同じ基準で労災保険の対象です。休んだ分の給料についても、休業4日目から給料の約8割が労災保険から支給されます。

この記事では、労働災害を扱う弁護士が、次の3点を解説します。

  1. パート・アルバイトも労災保険の対象になること(対象になるケース・ならないケース)
  2. 休んだ分の給料(休業補償)の計算方法と計算例
  3. 会社に「労災はない」と言われたときの対処
目次

パート・アルバイトでも労災保険の対象です|雇用形態は関係ありません

まず前提として、労災保険は正社員だけの制度ではありません。パートやアルバイトでも対象です。

対象になるのは労働基準法上の「労働者」

労災保険の対象になるのは、労働基準法上の「労働者」、つまり会社の指示のもとで働き、賃金を受け取っている人です。正社員かどうかは条件になっていません。会社の指示のもとで働いていて、賃金も受け取っているのであれば、正社員以外のパート・アルバイトでも対象です。

補償の内容も計算方法も、正社員と同じ基準

パート・アルバイトの方は、正社員と同じ基準で補償を受けられます。労災の給付の計算方法も雇用形態に関係なく、正社員でもパート・アルバイトでも計算の考え方は同じです。「正社員ではないから、権利を主張するのは気が引ける」と感じる必要はありません。

対象外になるのは個人事業主・会社役員(原則)

反対に、労災の対象外となってしまうのは、例えば個人事業主の方や会社役員の方です。こうした方には特別加入制度という例外はありますが、基本的には労災保険の対象外となります。

労災の対象になるケース・ならないケース

では、パート・アルバイトの方はどんな場合に労災の対象になるのでしょうか。業務中の災害や通勤中の災害などが対象です。

業務中のケガの例

  • 厨房で滑って転倒し、骨折した
  • 機械の誤作動で手を負傷した

通勤中のケガの例

  • 通勤途中に交通事故に遭った
  • 仕事帰りに駅の階段で転倒した

こうした業務中・通勤中の災害は、対象となるケースです。

対象外になる例|大きく寄り道した帰り道の事故

反対に、対象にならないケースもあります。例えば、勤務先からの帰り道ではあるものの、大きく寄り道してしまったときの事故は、対象外となる可能性があります。

※実際に労災保険の対象となるか否かは、具体的な事情を踏まえて判断されます。

パート・アルバイトが受けられる労災の補償(主なもの)

労災事故でケガをして通院した場合の主な補償は、次のものです。

補償給付の名称内容
治療費療養(補償)等給付治療費・薬代など(労災指定医療機関なら窓口負担なし)
休んだ分休業(補償)等給付休業4日目から、給料の約8割が支給されます
障害が残った障害(補償)等給付障害の程度(等級)に応じて一時金や年金が支給されます

このうち、「休んだ分の給料はどうなるのか」「いくらぐらい出るのか」は、とくに気になるところだと思います。次で、休業補償の計算方法を見ていきます。

休んだ分の給料はいくら?|休業補償は4日目から約8割

まず「給付基礎日額」を計算する

基本になるのは「給付基礎日額」です。これは、原則として、事故前3か月の賃金(ボーナス等は除く)の合計÷その期間の暦日数で計算します。つまり、1日あたりの賃金です。

支給額は日額の60%+20%=約8割

ここは少しわかりづらいのですが、支給は2つに分かれています。休業(補償)給付が給付基礎日額の60%、休業特別支給金が給付基礎日額の20%。合わせて、事故前の賃金の約8割が支払われる計算です。給料の100%ではなく、だいたい8割という数字であることを押さえておきましょう。

いつから?|休業4日目から(最初の3日間は対象になりません)

もう一つわかりづらいのが「いつから」です。労働災害が起きて仕事ができなくなり、賃金を受け取っていない最初の3日間は労災保険の対象にならず、休業4日目から対象になります。

休業中の補償については、基礎知識ページ「休業中の補償について」もあわせてご覧ください。

計算例|月給20万円・32日休業の場合はいくら?

例えば、事故前の収入が月20万円で、休業4日目からの休業が32日間だった場合で計算してみます。

手順計算
給付基礎日額60万円(3か月分)÷92日≒6522円
1日あたりの支給額6522円×60%+6522円×20%≒5217円
32日分5217円×32日=16万6944円

月20万円なので、3か月分で60万円。直近3か月の暦日数が仮に92日だったとすると、60万円÷92日で6522円が給付基礎日額です。その60%と20%を足した1日あたり5217円に、32日をかけて16万6944円。だいたいどれくらいお金が出るのか、という目安はこのように計算します。

※待期期間3日間のほか、32日の休業として計算しています。

※計算の一例です。実際の金額は、賃金や休業日数により異なります。

会社に「パートだから労災はない」と言われたら

労働者であれば対象です|会社の承認は必要ありません

もし「あなたはパートだから、労災は入っていない」と言われたとしても、労働者であれば労災保険の対象です。労災保険の利用に、会社の許可や承認は必要ありません。

相談先は労働基準監督署・弁護士

会社が協力してくれない場合は、労働基準監督署に相談・申請できます。弁護士に相談する方法もあります。申請の具体的な手順は「労災申請の手続の流れ」の記事で解説しています。

あわせて知っておきたいこと|時効と慰謝料

給付ごとに2年または5年の時効があります

休業・治療費・後遺障害など、労災にはいろいろな給付がありますが、概ね、給付ごとに2年または5年の時効があります。申請を忘れているうちに2年・5年が経ってしまう前に、早めに手続をすることをおすすめします。

慰謝料は労災保険からは支払われません

労災保険からは、慰謝料は支払われません。ケガをしてとても痛い・辛いという精神的な苦痛への慰謝料を請求したいときは、会社に安全配慮義務違反がある場合に、会社への損害賠償請求を検討することが考えられます。

まとめ|パート・アルバイトの労災で押さえておきたい3つのポイント

  1. パート・アルバイトも、正社員と同じ基準で労災の対象。雇用形態は関係ない。
  2. 休業(補償)給付は休業4日目から、給料の約8割(60%+20%)。計算方法も正社員と同じ。
  3. 会社の承認がなくても、労働基準監督署に申請できる。

よくある質問

パートですが、会社から「労災はない」と言われました。本当に対象になりますか?

会社の指示のもとで働き、賃金を受け取っている労働者であれば、パート・アルバイトでも労災保険の対象です。労災保険の利用に会社の承認は必要ありません。会社が協力してくれない場合は、労働基準監督署や弁護士にご相談ください。

アルバイトが労災で仕事を休んだら、給料はいくらもらえますか?

休業(補償)給付が給付基礎日額の60%、休業特別支給金が20%で、合わせて事故前の賃金の約8割が目安です。給付基礎日額は、原則として、事故前3か月の賃金(ボーナス等は除く)の合計をその期間の暦日数で割った金額です。計算方法は正社員と同じです。

休業補償はいつから支給されますか?休み始めの3日間はどうなりますか?

労働災害で仕事ができなくなり、賃金を受け取っていない最初の3日間は労災保険の対象にならず、休業4日目から対象になります。業務災害の場合、最初の3日間について、会社に対して休業補償を請求します。

通勤途中の事故でも労災になりますか?

通勤途中に交通事故に遭った、仕事帰りに駅の階段で転倒した、といった通勤中の災害は対象となるケースです。ただし、大きく寄り道した帰り道の事故などは対象外となる可能性があります。実際に対象となるか否かは、具体的な事情を踏まえて判断されます。

労災保険で慰謝料はもらえますか?

労災保険からは慰謝料は支払われません。会社に安全配慮義務違反がある場合に、会社への損害賠償請求を検討することが考えられます。

パート・アルバイトの労災のご相談は弁護士法人シーライトへ

会社からあれこれ言われて「労災保険はダメなのかな」と思ったとしても、一人で抱え込んで結論を出さないでください。当事務所では、労災被害者の方やそのご家族からのご相談を、原則として無料でお受けしております。労災申請や会社への損害賠償請求のご依頼も、初回相談料・着手金は原則0円です(別途、事務手数料3万円がかかります。費用の詳細は費用ページをご確認ください)。

全国対応(オンライン相談可)です。まずはお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修弁護士

弁護士 澁谷大

弁護士法人シーライト

弁護士 澁谷 大

神奈川県弁護士会所属。労働災害や交通事故の相談実績多数。適正な後遺障害等級認定ができるよう、的確でわかりやすい説明に定評がある。人身損害被害の救済のために、日々努力している。

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