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落下物に当たった(飛来)事故

目次

飛来物衝突の労災事故

飛来物・落下物が当たって怪我をしたという労災事故は頻繁に発生しています。
しかも重症化してしまうという事案が多い事故態様です。

このタイプの労災事故は、建設業や製造業、運送業などの現場で特に顕著によくみられます。

例を挙げると、

  • 溶接作業中だった作業員にクレーンでつり上げられた鋼管が激突した。
  • つり上げていたパイルのロープが切れ、コンクリートパイルの打込作業中の労働者が下敷きとなり死亡した。
  • 落下してきた足場板が同じ建物の下部階で外面配管工事を行っていた労働者の左足に直撃した。
  • トラックの荷台から廃材を荷降ろし作業中、崩れ落ちた廃材の下敷きになり死亡した。

などです。

高い位置から落下してくる重量物が激突・直撃する事故態様のため、重篤な後遺障害が残ったり、死亡事故につながったりという事案が後を絶ちません。

以下、飛来物衝突事故などにおける実際の補償や賠償について解説します。

勤務先の会社や元請け会社に対して、損害賠償請求ができる可能性があります

まず労災保険を利用することで、万が一後遺障害が残ってしまったり、死亡してしまったりという場合、多くのケースで、労災保険から相応の高額補償(数百万円から数千万円)がなされることになります。

この補償に加えて、労働現場の管理責任について「安全配慮義務違反」や「不法行為責任」などを根拠に、勤務先の会社や事業主、元請け会社に対して損害賠償請求が可能なケースも多くあります。

しかし「勤務先の会社や事業主、元請け会社に対して損害賠償請求できる可能がある」ことを知らずに、労災保険からの給付を受け取っただけで「すべての補償が終わった」と思い込んでしまう方が多いのです。

中には「同じ現場で作業していた作業員が落とした落下物が当たった」ケースのため、「責任を負うのは落とした本人だけ」と思い込んでしまうことがあるかもしれません。

では、このような場合責任は誰にあるのでしょうか?

もちろん落としてしまった本人にも責任はありますが、作業員である一個人では損害賠償金を支払えるだけの資力がないことがほとんどでしょう。
そのため、このような場合、法律では労災事故の現場における「責任」を使用者(=勤務先の会社、事業主や元請け会社)に対して損害賠償請求しうる定めが置かれています。

この定めは「使用者責任」(民法715条)といい、勤務先の会社、事業主や元請け会社に対して損害賠請求償を行う際の根拠となります。

過去の事例

「飛来物・落下物が当たって怪我をした」という労災事故のイメージをしていただくうえで参考になる裁判例をいくつかご紹介します。

①工場内で鋼管がクレーンで運ばれ、つり上げ回転させて荷卸しする危険な場所であることを知りながら、つり上げられた鋼管の動静に注意を払わず、背中を向けて溶接作業に従事していた労働者に、鋼管が激突して被災した事案(東京地裁、昭和58年12月23日判決)

  • 会社は、クレーンの運転士とワイヤーロープの1本掛けでは平衡を失い、滑落する危険があると考え、右鋼管の玉掛け方法、つり上げの高さ、方向等を十分に打ち合わせし、移動中の鋼管の滑落による事故の発生を未然に防止すべき注意義務があったとして、会社側の責任を認めた。
  • 労働者は、クレーンで鋼管が運ばれてくることを知らされていたのだから、鋼管の状態に注意すべきであり、若干の落ち度があったとし、過失相殺により賠償金が10%減額された。

②工場でコンクリートパイルの打込作業中、つり上げていたパイルのロープが切れ、労働者が下敷きとなり死亡した事案(水戸地裁、昭和58年7月29日判決)

会社にも責任が認められたが、労働者も会社が用意した新品のロープを使用しなかったとして、過失相殺により賠償金が20%減額された。

③建設中の建物の上部階で、コンクリート型枠解体作業に従事していた作業員が、足場板に足を踏み出したところ、足場板が外れて落下した。その落下した足場板は、同じ建物の下部階で外面配管工事を行っていた労働者の左足に衝突し、左足部挫滅創等の障害を負った事案(東京地裁、昭和50年12月24日判決)

  • 会社には、上部階で作業に従事していた作業員に、高所での作業にあたるうえで注意すべき足場板の連結状態の確認を怠った点で過失があるとし、使用者の責任を認めた。
  • 被災した労働者にも、上部階で解体作業が行われていることを承知しており、物が落下してくる危険性があることを容易に予測し得たとし、20%の過失を認めた。

このように、裁判所は、勤務先の会社、事業主や元請け会社に対する責任を認めつつも、労働者側の落ち度を理由として、一定程度賠償金が減額する結論を出すことが多いです。

事業主や元請会社に対して損害賠償請求をするために必要なこと

事業主や元請け会社に対して損害賠償請求をするためには、事業主や元請け会社に「安全配慮義務違反」や「不法行為責任(使用者責任等)」が認められるか否かを検証する必要があります

この検証にあたっては、労働基準監督署に保管されている労災事故に関する記録をはじめとした、さまざまな書類の取り寄せ、調査が必要となります。

また生じた損害(後遺障害、死亡等)に応じ、裁判となった場合には、どの程度の損害賠償金が認められるのかを調査、算定する必要があります。

さらに、事業主や元請け会社に対する責任が認められそうであっても、労災事故に被災した方に落ち度がまったくないのか、相当程度の落ち度があると考えざるを得ないのか、落ち度があるとしたらどの程度の落ち度とされそうなのかを検討する必要があります。

これらの記録や書類の取り寄せ方法や、取り寄せた記録や書類のどの部分がポイントになるかの見極め、損害額の算定の方法、被災者の落ち度の有無・程度など、いずれの作業にあたっても実務や法律についての専門知識・経験がない一般の方には非常に荷の重い作業でしょう。

例えば、損害の計算という作業一つをとっても容易ではありません。

  • どういった損害を請求できるのか
  • 慰謝料がいくらなのか
  • 仕事が出来なくなったことに対する補償の計算はどのようにするのか
  • 将来介護費は請求できるのか

など、その算定には専門的知識が必要です。

また、勤務先会社や元請け会社とのやり取りも精神的に相当な負担がかかります。
重篤な症状を抱えた方やご家族の方が行うにはご自身ではよく分からないことが多く、どのように交渉を進めればよいかも悩み、お忙しい中で非常にストレスに感じられることと思います。

このような場面では、労災事故の取り扱い経験がある弁護士であれば、調査すべき事項や、とるべき方針を立てた上で、交渉や手続を一歩一歩進めていくことができます

何もわからない暗闇の中を歩いていた状態からやるべきことが整理され、進むべき道筋が明らかとなり、大まかな先行き・見通しも立ってきます

精神的にも肉体的にも負担が減り、ご自身ですべてを行った場合よりも賠償金の増額が見込めることも多々あると思います。

飛来物・落下物が当たって怪我をしたという労災事故に遭われ、後遺障害が残ってしまわれた方、亡くなられた方のご遺族におかれましては、まずは当事務所にご相談ください。

相談の流れはこちらをご覧ください。

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