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労災申請の手続の流れを弁護士がわかりやすく解説!注意点も

「労災申請」の手続をスムーズに進めたいとお考えの方も多いでしょう。しかし、手続は複雑で何から手をつければよいかわからない方もいらっしゃいます。
本記事では、労災申請の手続の流れを弁護士がわかりやすく解説します。 さらに、申請時に必要な書類や注意点、労災を申請しないデメリットなども紹介します。最後まで読むことで労災申請の流れを理解でき、会社から協力を得られなかったとしてもご自身でスムーズに進められます。

目次

労災申請の手続の流れ

労災が発生したら、速やかに会社に報告します。その際、ケガや病気の具合などをより細かに伝えると、手続もスムーズに進みやすくなります。下記では、労災申請の大まかな流れや労災保険が給付されるまでの期間、書類は誰が書くのかなどをわかりやすく説明します。

労働災害事故の発生

労働災害とは労災の正式名称で、労働者が通勤中や業務中に受けた負傷や疾病、死亡などを指します。具体的には、下記のような場合が労働災害に該当します。

労働災害に該当する事故例

  • 業務中に工場内の機械に指を挟まれて切断した
  • 通勤中に自転車で転んでケガした
  • セクハラやパワハラなどの精神的苦痛による精神障害
  • 長時間労働による過労死

身体的なケガ以外に、業務により生じた精神障害も労災の対象になる場合があります。過労死も業務が起因して死亡したため、労災の給付が受けられる可能性があります。

労働者は会社に報告

労働災害によるケガや病気などが発生したら、直ちに会社に報告します。会社は、労働基準監督署に労働者死傷病報告をしなければならないため、必ず労災の旨を伝えましょう。その際、下記のような労災の詳細についても詳しく伝えておくと、今後の手続が円滑に進みやすくなります。

会社に報告すること

  • 被災した労働者の氏名
  • 労災が発生した日
  • ケガの部位
  • 病気の詳細

病院を受診

労災指定医療機関等であれば、労災で被ったケガや病気の治療費は労災保険でまかなわれるため窓口負担はありません。ただし、近くに労災指定医療機関等がなくて通えない場合は、一般の病院でも治療を受けられます。 その場合、健康保険が使えないので全額自己負担になりますが、労災申請の手続が完了すれば、後ほど治療費は返金されます。
そのため、労災指定医療機関以外を受診する際はケガや病気の程度により、治療費が高額になるのを理解しておきましょう。労災保険を取り扱っているか不明なときは、直接病院に問い合わせてください。

会社が申請書類を作成

労災保険の給付金には、種類がいくつかあります。また、添付する書類も治療費の領収書や賃金台帳なども労災保険の種類により異なるため、間違えないように確認しましょう。労災保険の手続に必要な書類、提出先をわかりやすく表にしたものが下記です。

労災申請の必要な書類と提出先

労災保険の種類必要な書類提出先
療養補償給付・療養給付<労災病院や労災指定医療機関を受診した場合>
・ 様式第5号
・ 様式第16号の3
受診した医療機関
(病院や薬局)
<労災病院や労災指定医療機関以外を受診した場合>
・様式第7号
・様式第16号の5
・治療費の領収書
所轄の労働基準監督署
<医療機関の変更や複数の医療機関を受診する場合>
・様式第6号
新たに受診した医療機関
休業補償給付・休業給付・様式第8号
・様式第16号6
・賃金台帳、出勤簿の写し
・障害年金を受給している場合、支給額が証明できるもの
所轄の労働基準監督署
障害補償給付・障害給付・様式第10号
・様式第16号の7
・後遺障害診断書、レントゲン写真やMRI画像などの資料
所轄の労働基準監督署
遺族補償給付・遺族給付・様式第12号
・様式第16号の8
・死亡診断書、戸籍謄本、生計維持関係を証明する書類など
所轄の労働基準監督署
参考:厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内

療養補償給付の請求書は薬局分も必要

労災保険は、業務中や通勤途中にケガや病気で治療が必要になった際、医療費をサポートしてくれる制度です。労災保険によるサポートを受けるには、処方されたお薬の購入を証明しなければなりません。そのため、病院だけでなく、薬局でもらったお薬の費用についても請求書が必要になります。 請求書の様式は労災指定病院の薬局なら様式第5号、労災して病院以外の薬局なら様式第7号で、それぞれを通院している病院に提出してください。病院から所轄の労働基準監督署に提出してくれます。

会社が労働基準監督署に書類を提出

必要な書類への記入が完了したら、会社が労働基準監督署に申請書を提出します。事前に、添付する書類に抜けがないかしっかり確認しましょう。なお、書類の提出は自分で行っても問題ありません。会社側で労災申請の手続に協力してくれないといった理由がある場合は、自分で労働基準監督署への手続を済ませるとともに、会社が労災申請に非協力的である旨を相談してください。

労働基準監督署の調査と審査

請求書の提出後、労働基準監督署が労働者の被った災害の労災認定を審査します。調査の期間は、労災の状況により大きく異なる場合があります。
たとえば、機械の操作ミスや転落・転倒などの事故型の労災であれば、業務と深く関係していることがわかるため調査期間も短期間で終了する傾向にあります。 一方、長時間労働による過労死やパワハラによる精神障害など病気型の労災は、業務との関連を詳しく調べる必要があるため、調査期間も半年以上に長期化する可能性が高いです。

労災保険の支給・不支給の決定

労働基準監督署による調査で労災と認定されれば、労災保険の支給が決定します。労災と認められなかった場合、支給はされません。この決定は、労働者のプライバシー保護や労働者自身が自分の権利をしっかり把握できるようにするため、労働者に直接文書で通知されます。また、会社を経由せずに労働者に直接通知することで、手続を簡素化する目的もあります。

支給の場合は、保険の給付開始

労災と認められたら、指定した銀行口座に労災保険の給付金が入金されます。労災の状況に応じて労災保険でカバーする範囲は異なります。 下記が、労災保険の給付内容の代表例です。

労災保険の給付内容

労災保険の種類支給事由給付内容
療養給付傷病により療養するとき・診察、治療材料、薬剤、処置、手術、在宅看護など
・現物支給が基本
休業給付傷病の療養で働けなくなり、賃金を受け取れないとき・休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の60%相当
(休日や出勤停止期間も給付対象)
障害給付傷病の治癒後、身体に障害が残ったとき・障害等級第1級から第7級の重い障害の場合、1年につき、給付基礎日額の313日分から131日分の年金
・第8級から第14級の障害の場合、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金
遺族年金死亡したとき・遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245日分から153日分の年金

治療費やお薬代は、労働基準監督署から労災指定病院に直接入金されるので心配ありません。銀行口座に補償金が入金されたら、予想していた金額か確かめましょう。

不支給の場合には不服申し立てが可能

労災が不支給になった場合、労災保険審査請求制度などを利用して、不服申し立てができます。さらに、審査請求しても不支給となった場合や審査請求してから3か月経過しても結果が出ない場合、再審査請求が可能です。 不服申し立てを行う際は、期限などの条件が設けられているため、手続をするなら早めに行動する必要があります。弁護士や労働基準監督署に審査請求を検討している旨を伝え、アドバイスをもらいましょう。
参考:厚生労働省「労災保険審査官の決定に不服がある場合、どうしたらよいでしょうか

労災申請から支給決定までにかかる期間

労災申請から支給決定までは、ケースによって異なりますが、おおよそ1か月~数か月が目安です。提出した書類に抜けがあった場合、審査が遅れる可能性があります。また、事故の状況が複雑だと、より細かい調査が必要になるため調査の長期化が考えられます。 スムーズに手続を進めるため、必要な書類を早めに揃え、わからない点があれば労働基準監督署に早めに問い合わせるなど積極的に行動することが大切です。
参考:厚生労働省「労災保険請求のためのガイドブック

労災保険の給付開始日・給付期間

労災認定されたのち、給付が開始されます。給付期間は補償の種類によって異なりますが、基本的に制限はないため、支給事由を満たす限り補償金を受け取れます。
代表的な補償ごとの給付期間をまとめたのが、下記の表です。

労災保険の給付期間

労災保険の種類給付期間
療養(補償)給付病気やケガが治癒(症状固定)するまで支給が継続
休業(補償)給付休業4日目以降、支給事由を満たす限り継続
障害(補償)給付支給事由を満たす限り継続
遺族(補償)年金受給者(遺族)が支給事由を満たす限り継続(失権しても次の受給者に支給される)

労災申請の手続を行う人

労災申請の手続は、労災を被った労働者かその家族、もしくは会社が行えます。ただし、労働者が労災の申請を行うのは負担が大きいため、会社が書類を記入して申請を進める場合が多いです。
また、日雇いやアルバイトなど非正規の労働者や派遣労働者の場合も、労災の手続を行えます。日雇いやアルバイトなどの非正規の労働者も正規の労働者と同じように、労災が起きた本人か会社に手続を進めてもらいます。派遣労働者の労災の手続を行うのは、本人か雇用関係にある派遣元の会社です。
参考:厚生労働省「労災保険請求のためのガイドブック

【注意点】労災申請には時効期限がある

労災申請には時効期限が設けられており、それを過ぎると補償金を受け取れません。補償によって時効期限は異なるため、労災申請をご検討している場合は早めに手続を済ませましょう。自分の労災が補償される給付の時効期限を、あらかじめ確認しておくと安心です。
下記の表に、労災保険ごとの時効期限をまとめました。

労災申請ごとの時効危険と起算日

労災保険の種類時効期限起算日
療養補償給付・療養給付2年療養にかかる費用の支出が具体的に確定した日の翌日
休業補償給付・休業給付2年働くことができず賃金が受けられない日ごとの翌日
障害補償給付・障害給付5年傷病が治癒した(症状固定)翌日
遺族補償給付・遺族給付5年労災で労働者が死亡した日の翌日

会社が労災申請を拒否したら?

会社が労災申請を拒否するのには、さまざまな理由が考えられますが、場合によって法令に違反する可能性があります。会社が労災を拒むことで補償を受けられなくなり、労働者は満足な治療が受けられないでしょう。下記では、労災隠しや会社から労災申請を拒否された場合の対処法を解説します。

労災隠しは犯罪にあたる

労災隠しとは、労働者に労働災害が起きたにもかかわらず、企業のイメージダウンを防ぐために労働基準監督署に労働者死傷病報告をしない状態を指します。労働者が業務中に負傷や死亡した場合、企業は労働基準監督署に報告するのが義務付けられています。
そのため、会社が労災隠しをすると労働安全衛生法に違反し、50万円以下の罰金が課せられる可能性があります。労災隠しに加担しないように、ご注意ください。会社が労災申請への協力を拒む場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

労災隠しをされた場合は自分で申請が可能

労災申請は、自分で手続を進められます。書類に必要事項を自分で記入し、添付する書類を集めたら、所轄の労働基準監督署や医療機関に提出すれば問題ありません。請求書は、厚生労働省のホームページでダウンロードできます。下記の「自分で労災申請をする場合の流れ」で詳しく解説しているため、参考にしてみてください。

自分で労災申請をする場合の流れ

会社側で労災申請を進めてくれない場合は、自分で手続を進めましょう。下記で、労災を進める際の流れについて、わかりやすく解説します。詳しい申請方法は上記の労災申請の手続と変わらないため、併せてご覧ください。

厚生労働省のWEBサイトから申請書類をダウンロード

まず、厚生労働省のWEBサイトで請求書をダウンロードし、必要書類を入手します。通勤災害か業務災害かにより給付は異なり、請求書も様式が異なるため間違えないようにしてください。

通勤災害で請求できる可能性のある給付

  • 療養補償給付
  • 休業補償給付
  • 障害補償給付
  • 遺族補償給付
  • 介護補償給付

業務災害で請求できる可能性のある給付

  • 療養補償給付
  • 休業補償給付
  • 障害補償給付
  • 遺族補償給付
  • 介護補償給付

厚生労働省|労災保険給付関係主要様式ダウンロード

会社に事業主証明を書いてもらう

労災申請に必要な書類の中には、会社が記入する事業者証明欄がありますが、空欄でも構いません。会社の証明がなくても、労災の審査が不利に進むわけではありません。労働基準監督署には、会社が労災申請の協力をしてくれない旨を伝えましょう。労働基準監督署は、状況を考慮して労災の審査を行ってくれます。

労働基準監督署に書類を提出する

記入が完了した請求書は、直接労働基準監督署に持っていくか、郵送でも提出できます。ただし、療養補償給付の提出先は通院中の病院です。労災病院や労災指定病院で治療を受けた場合は、病院に請求書を提出し、労災病院以外で治療を受けた場合は所轄の労働基準監督署に提出します。請求書を提出すると、労働基準監督署が労災認定するかどうかの審査を行います。

労災申請をしない場合のデメリット

労災申請は、業務中や通勤中にケガや病気になった際、治療費や休業補償などを受けるために大切な手続です。しかし、さまざまな理由から、労災申請をしないケースもあるでしょう。下記で労災申請しない場合、どのようなデメリットがあるのかを解説します。

治療費の負担が発生する

労災認定されれば、通院中の治療費は全額労災保険でまかなえるので窓口負担はありません。しかし労災申請をしないと、かかった治療費は全額労働者の負担になります。通常であれば、病院で治療を行う際に健康保険が使えますが、労災の場合は使用不可能です。 健康保険は、業務以外のケガや病気などを対象とする公的保険であり、労災のような業務中のケガや病気を対象にしていないためです。労災申請をしないことで、経済的負担がかかるのが大きなデメリットといえるでしょう。

過失割合の影響を受ける

交通事故の当事者の間でどのくらい過失があったかを過失割合で数値化し、補償額が決まります。業務中や通勤中の事故であれば労災申請ができるため、労災保険で補償が受けられます。自賠責保険は120万円が上限であるため、これ以上かかる場合労災保険を使えば減額が可能です。一方、労災申請をしないと、この過失割合によって自己負担が前後するため、自己負担が大きくなるケースも考えられます。

当然、補償は受けられない

労災保険では、治療費の全額支給や障害等級に応じた年金・一時金などの手厚い補償があります。さらに、労災認定されれば、通常の補償金以外にも特別支給金が支給されます。特別支給金は、労働者の社会復帰をサポートするために社会復帰促進等事業の一環として支給されるお金です。労災申請しなければ、これらの手厚い補償は受けられません。

労災にも関わらず健康保険を使用してしまった場合は?

労災にも関わらず、健康保険を使用した場合は速やかに労災保険へ切り替えましょう。治療を受けた病院に、労災保険に切り替えられるか確認してください。病院で切り替えができる場合は、療養給付の請求書の提出が必要です。病院で切り替えができない場合は治療費を全額自己負担で支払い、労災保険への切り替えが済むと返金されます。

労災保険のみで補償ができない場合は損害賠償請求を検討

労災保険では、慰謝料は請求できません。労災保険は、業務中や通勤中のケガや病気で仕事ができなくなった労働者の経済的損失を補うのが目的です。慰謝料は、精神的苦痛を被った場合に損害賠償として請求するお金のため、労災とは認められないのです。そのため、慰謝料を請求するなら、損害賠償請求の検討が必要です。 ただし、損害賠償請求をするには、会社に安全配慮義務違反があった場合のみ請求可能です。そのため、どのようなケースでも損害賠償請求ができるわけではないことを理解しておきましょう。
また、損害賠償請求では、労災保険で足りなかった治療費、休業損害、逸失利益、介護費用も請求可能です。損害賠償請求を検討中の方は、弁護士に相談するのをおすすめします。

まとめ

労災申請は会社に労災が起きた旨を報告し、必要な書類を集め、労働基準監督署に提出する流れです。その後は、労働基準監督署で労災認定できるかを調査します。会社側が労災申請を進める場合が多いですが、協力を得られない場合は自分でも手続可能で、厚生労働省のWEBサイトから請求書をダウンロードできます。 もし、会社が労災隠しを狙っているなら、加担するのは控え、労働基準監督署に相談しましょう。労災の慰謝料請求をお考えの場合は、弁護士へご相談ください。

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