被害者 | 20代男性 |
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部位 | 頭部 |
傷病名 | 高次脳機能障害 |
後遺障害等級 | 9級 |
獲得金額 | 約150万円 審査請求により増額 |
相談内容
被害者のお母様より、お子様が建設現場での転落事故に遭った、とのお問合せをいただきました。事故により脳に怪我を負い、12級が認定されたので今後の慰謝料請求を考えているとのお問合せでした。
ご面談時に資料を確認したところ、嗅覚の障害で12級が認定されていました。脳の怪我による症状が発生しているとのお話がありましたが、それが後遺障害の認定に反映されていないという、非常に重要な事実が発覚しました。
交通事故や労災事故で頭部の怪我を負うと、高次脳機能障害の症状が現れることがあります。具体的には、記憶力の低下、注意力の低下、性格の変化などの症状です。
被害者ご本人やお母様は、脳の怪我による症状も併せて等級が認定されていると思っていた、とのことでした。しかし、実際には、認定は嗅覚障害のみであり、高次脳機能障害が反映されていませんでした。
労災での後遺障害の認定を争う場合、原則として審査請求を行う必要があります。審査請求には期限があるので、大急ぎで対応する必要がありました。
また、脳の怪我を負っていたにもかかわらず、その治療はほとんど行われていない様子でした。まずは、高次脳機能障害に詳しい病院を紹介し、しっかりと治療を受けること、脳のお怪我について認定を受けるために、早急に審査請求を行う必要があることをご説明し、ご依頼いただきました。
サポートの流れ
まずは、初回面談でのアドバイス通り、高次脳機能障害に詳しい病院に通院いただき、必要な検査を受けられたかを確認しました。
また、高次脳機能障害がきちんと審査されていなかった理由を探るべく、労働局に対して、保有個人情報の開示請求を行いました。高次脳機能障害の記録があるか、治療を受けているかの確認をしたところ、脳の怪我について、事故直後に治療を受けたものの、その後は治療があまり行われていなかったことが判明しました。そのため、労災の認定では高次脳機能障害が審査されませんでした。
その後、審査請求の期限の問題があったので、急いで審査請求を行いました。
事故から9ヶ月以上経ってからのご相談であり、その後に高次脳機能障害の本格的な治療が始まりました。そのため、そもそも高次脳機能障害があるのか、それは事故のせいなのか、という点が審査請求で問題になると予想されました。
そこで、事故直後の検査画像・医療記録や新たに通院を始めた病院の記録を準備して、労災事故により脳に外傷を負ったことを主張しました。
また、検査画像などの記録に加えて、ご家族から、高次脳機能障害の具体的な症状や生活での支障をお聞きし、書面にまとめました。
当初の予想通り、審査請求では、「なぜ、労災事故から数ヶ月も経過してから治療を開始しているのか」という指摘を受けました。これに対し、 高次脳機能障害が見逃されやすい症状であること、治療までに時間がかかった経緯などを、証拠に基づいて丁寧に主張・立証しました。
解決内容
このような対応のおかげか、審査請求が認容され、高次脳障害について9級が認定されました。
審査請求は、認容されるケースが少なく、非常に狭き門です。今回は無事に認容されましたが、審査請求で争うのではなく、最初の申請の段階から適切な治療を受け、適切な対応を行うことが望ましいです。
所感(担当弁護士より)
高次脳機能障害により、被害者ご本人やご家族が苦しんでいたにもかかわらず、労災では後遺障害として認定されていませんでした。高次脳機能障害を裏付ける証拠を提出し、主張・立証を積み重ねたことで、無事に認定されました。
他方で、事故当初から相談いただいていれば、高次脳機能障害に詳しい病院を最初から紹介できたのに、という思いも強いです。
高次脳機能障害は、見落とされやすい症状であり、適切な治療に繋がらない例があります。
今回は、我々やご家族・ご本人が必要な対応を行い、最終的には適切な等級が認定されました。しかし、審査請求は、必ず認容されるわけではありません。むしろ、認容されるケースは少なく、非常に狭き門です。
脳の怪我という重大な怪我だから当たり前に治療を受けられるだろう、当然に労基署が審査してくれるだろうと考えてしまうかもしれません。しかし、実際には、治療の段階から適切な対応を積み重ねる必要があります。
適切な認定や補償を受けるには、対応を労基署任せにせず、適切な治療・対応を進めることが大切です。
労災事故に遭われてお怪我をされたら、早い段階で弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。早い段階から適切な対応を進めるためです。
弊所では、労災被害に遭われた方はご負担なしでご相談お受けしておりますので、お気軽にお問合せください。