被害者 | 30代会社員男性 |
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部位 | 耳 |
傷病名 | 聴覚障害、難聴 |
後遺障害等級 | 10級 |
獲得金額 | 約547万円 |
項目 | サポート前 | サポート後 | 増幅幅 |
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後遺障害等級 | 10級 | 10級 | – |
入通院慰謝料 | – | 約169万円 | – |
休業損害 | – | 約466万円 | – |
逸失利益 | – | 約1835万円 | – |
後遺障害慰謝料 | – | 550万円 | – |
治療費等 | 労災保険支払い | 労災保険支払い | – |
損害小計 | – | 約3020万円 | – |
労災保険既払い額 | 約291万円 | ー約291万円 | 0 |
その他既払い金 | 約118万円 | ー約118万円 | 0 |
過失割合控除 | – | ー約2114万円 | – |
調整金 | – | 約49万円 | 約547万円 |
獲得額合計 | 約409万円 | 約956万円 | 約547万円 |
ご相談内容
勤務中の事故により、聴覚に障害を負ってしまったにも関わらず、会社が責任を認めてくれずにお困りになっていました。
事故直前に会社から退職勧告されていて、この事故後に退職したものの、会社に対して損害賠償請求をしたいということで、今回ご相談にいらっしゃいました。
ご依頼者様は、ある機械の設置工事作業を担当していました。その機械の下部には、金属の油受け(オイルパン)を取り付けておく必要があります。本来、オイルパンは取り付けされた状態で納品されるものなので、通常は取り付け作業は不要です。しかし、本件事故のときは、勤務先の発注ミスで取り付けされずに納品されていたため、特別に取り付けをしなくてはならず、イレギュラーな取り付け作業を行ったために起きてしまいました。
オイルパンを設置するには、機械の下や隙間の狭い部分へ潜り、不安定な姿勢になって、金属を研磨する電動グラインダーを使用する必要があり、狭い場所で酷い騒音のグラインダーを使ったため、片耳が難聴になってしまったということでした。
ご面談以前に、ご自身で労災保険の障害補償給付の申請をされていたため、既に後遺障害等級10級は認定されていました。元勤務先である会社に損害賠償請求をするため、ご依頼いただきました。
サポートの流れ
まず、内容証明郵便で勤務先に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をおこないました。
しかし、会社側の回答は、会社がグラインダー作業時などには耳栓を付けるよう指示していたのに、ご依頼者が機械の下に潜ってグラインダーで作業をしていて耳栓が落ちて外れてしまった後も、作業を中断せずに耳栓を付け直さなかったことが本件事故の原因だとして、一切の支払いを拒否してきました。
これに対して、裁判での解決を選択し、訴訟を提起しました。
解決内容
訴訟では、裁判官に対し、機械・工事・作業の内容を理解してもらうことが必要です。
そのため、ご依頼者様と協力して機械の模型を作成し、その模型を使って当日の現場を再現をするなどして証拠として提出しました。 また、耳栓が落ちた後も作業を継続した主な原因として、下記の3点を挙げました。
- 本来行わないような場所や体勢でグラインダーを操作せざるを得なかったこと
- 連日の長時間労働、時には徹夜のような長時間労働があり、判断能力が著しく落ちていたこと
- 寝そべるよう体勢での作業のため、耳栓が油だまりに落ちて使用不能になってしまっていたこと
一つ一つ資料を集め、そのようなやむを得ない作業の継続であったことの主張立証に努めました。
その結果、裁判所からの和解案として、こちら側の過失割合は7割とするものの、会社側の安全配慮義務違反は認める内容の和解案が提示されました。
当初は事故の責任を認めず支払いを拒否していた会社側から、500万円以上の賠償金額を引き出せましたので、これで和解を受諾することにしました。
所感(担当弁護士より)
本件は、最初のご相談から解決まで4年以上を要した長丁場に亘る事案でした。
また、ご依頼者が既に勤務先を退職してしまっていたことなどにより、機械・工事・作業の資料が手元になく、これらを主張立証するのにもとても苦労しました。
しかし、ご依頼者と協力して模型を作成したり、労働基準監督署に情報開示をして資料を収集したりと地道な作業により、難しい主張立証を一つずつ乗り越えていくことができました。
過失割合は、ご依頼者側に相当程度大きいものとなるだろうと当初から想定されていました。しかし、勤務先の支払い拒否に屈することなく、二人三脚で事件を進めてきたことによって、最終的には会社側にも過失があったことを認めさせ、適切な解決金を獲得することができた事案だったと思います。
労災事故の特徴として、「会社がほとんどの証拠を持っている」「過失や安全配慮義務違反の主張立証は被害者側がしなくてはならない」等が挙げられます。
こういった被害者側にとって厳しい点について適切に対処するのは、労働災害など人身傷害賠償分野の知識が豊富な弁護士でないと困難で、裁判に不慣れな一般の方では、ほぼ不可能と考えられます。
労働災害の場合、早めに弁護士に相談することが大切になってきますので、会社の過失や安全配慮義務違反で労災事故に遭われた、そのような疑問があるとお考えの方は、お早めに労働災害の無料相談にお越しいただければと思います。