勤務先が事業主証明を拒否したが、申請サポートにより労災認定された事案

被害者40代男性 会社員
事案死亡事故
獲得金額遺族一時金:300万円+遺族年金:約290万円/年
目次

ご相談内容

被災者がビルから転落してお亡くなりになったとのお問合せをいただきました。

労災の請求権者は亡くなった被災者の奥様であり、ご面談には、被災者の奥様とそのご家族も一緒にいらっしゃいました。
ご面談では、まず事故状況の詳細をお伺いしました。事故現場には転落を防止する柵がなく、ビルから転落してしまったらしいとのことでした。勤務先への損害賠償請求も考えているとのお話がありましたので、事故原因や安全配慮義務違反を立証する証拠が必要になること、労基署に事故の状況や原因をきちんと調査してもらうことが重要であるとアドバイスしました。

その後、労災の請求書について勤務先が事業主証明を拒否したとのご連絡がありました。転落の経緯などが不明であり、業務との関係を証明できないためとの理由でした。労災の申請について、会社に任せておけば当然に認定されると思っていたが、このままでは不安なので依頼したいとのことでした。

そこで、被災者の奥様より、労災保険の申請サポートをご依頼いただきました。

サポートの流れ

必要な資料を収集し、労災保険を申請しました。勤務先が事業主証明を拒否したので、労災の認定要件を満たすことを被害者側で明らかにする必要があります。本件では、転落の経緯などが分からないことを踏まえ、事故が発生した状況を指摘し、労災の認定要件を満たすことを説明する意見書を作成しました。

また、ご依頼者から、被災者が業務中に記録をこまめに残していたとのお話がありました。そこで、事故直前の記録を確認し、その記録を意見書に添付しました。

加えて、意見書の内容に関する事実を調査するよう労基署に上申書を提出しました。

解決内容

意見書や上申書を添付して労災申請をしたおかげか、無事労災が認定されました。

保有個人情報の開示により、労災が認定された理由に関する資料をとりつけました。資料によると、事故現場の状況や被害者が残していた記録などから、何らかの業務上の理由で事故現場に行ったことが推定されて、労災が認定されました。申請時に作成した意見書に沿った内容での認定でした。

労災の給付では、遺族一時金300万円のほか、遺族年金(約290万円/年)、葬祭料、就学援護費が支給されました。一時金、葬祭料は一度きりですが、年金については今後も毎年奥様へ給付されます。

所感(担当弁護士より)

被災者が亡くなっているため、事故原因の詳細が分からない状況でしたが、労災が認定されました。ご依頼者から伺ったお話をもとに、労災の認定要件を満たすと説明する意見書を作成し、調査を求める上申書を出したことが功を奏したかと考えます。

勤務先は、労基署に対しても、屋上へ行った理由や転落の経緯が不明であり、事故現場の施設に不具合がない旨を説明していました。労災について、強く否定する態度かと考えます。

本件のように、事業主証明を拒否するなど勤務先が非協力的な態度の場合、最低限の書類だけで申請して労基署の調査に任せきりにするのではなく、労災の認定要件を満たしていることを被災者側で適切に指摘することが重要です。労災保険は、いったん不支給が決定されてしまうと、後に争うことが難しいです。そのため、労災申請の段階で、適切な資料を集めて労基署に提出することが重要です。

本件では、事故から数日後という最初期にお問合せいただけたことで、先手を打った対応をすることができました。労災事故に遭われた方やそのご家族は、お早めにお問い合わせください。

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